10代が描く未知の惑星。NASAも認めた守山中学・高校『ハビタブル研究会』とは?

10代が描く未知の惑星。NASAも認めた守山中学・高校『ハビタブル研究会』とは?

いよいよ宇宙旅行も本格化のステージに突入し、
地球を飛び出し”宇宙への旅”も夢ではなくなってきました。

慌ただしい日常の中で、ふと立ち止まってみれば、
そこには宇宙の無限の世界が広がっている。
輝く無数の星と、漆喰の闇の先へと想像をめぐらせば、
生命が存在するかもしれない惑星が、きっと宇宙のどこかに…。

2017年、太陽系から40光年離れた宇宙に、
地球に似た惑星が7つも見つかったと
NASAが発表し話題になりました。

地球から40光年の距離にあるみずがめ座の赤色矮星「TRAPPIST-1」には惑星が7個見つかっている。内側の5惑星は二酸化炭素などからなる薄い大気を持つ可能性が示唆されたほか、一部の惑星には地球の250倍もの水が存在するかもしれないという結果が得られている。

参照:TRAPPIST-1の惑星に地球に似た大気や大量の水が存在か|Astro Arts

地球外生命体が存在する可能性を持った領域のことを、
ハビタブルゾーンと呼び、そこには
無数の生命の可能性が溢れていると言います。

この広い宇宙の中で、生命が存在するのは地球だけ…?
そう考えられていたのは、もう今では昔のはなし。
少なくとも私たちが暮らす銀河系には、
地球に似た条件の惑星が3億個以上あるかもしれないと言われています。

生命が存在するかもしれない惑星はどんな姿?

▲参照:太陽系外惑星データベース「EXOKYOTO」より

この広い宇宙の中で、
生命が存在する可能性がある場所「ハビタブルゾーン」。

そのゾーンにある太陽系外惑星の絵を、
解析データをもとに想像して描くという
ちょっと特殊な活動をしている10代の学生たちが滋賀県にいました。

それが滋賀県立守山中学・高等学校「ハビタブル研究会」。

型にはまらない想像力で、生命がいるかもしれない
惑星のイメージを生き生きと描きだし、その腕前はなんと、
あのNASAにも認められているという日本で唯一の研究会です。

▲地球から約500光年離れたハビタブルゾーン内にある系外惑星「ケプラー186f」(太陽系外惑星データベース「EXOKYOTO」より)

この想像図は、2014年に太陽系外のハビタブルゾーン内で、
初めて発見された地球によく似た惑星、ケプラー186f。


▲常にふきつける強風にたなびく植物(太陽系外惑星データベース「EXOKYOTO」より)

きっとこんな姿に違いないという想像のもとに
「ハビタブル研究会」によって描かれました。

この不思議な植物は、よく見ると黒っぽく見えます。

じつは、この惑星は太陽から届く光のエネルギーが弱いため、
光合成に用いる緑色の葉緑素では光の吸収ができません。
そのため、黒色の光合成色素を持つ植物が生息しているかもしれない。
そんな想像のもとに描かれています。

地表では昼側から夜側に向かって
常に強風が吹いていると考えられるので、
植物は常に同じ方向にたなびいています。


▲地球から約40光年離れた系外惑星「トラピスト1」(太陽系外惑星データベース「EXOKYOTO」より)

2017年には、太陽系からおよそ40光年離れた宇宙に、
地球と似た大きさの惑星が7つあるとして話題になりました。

この惑星図を描いたのは、
現在、OBとしてハビタブル研究会の指導にあたる
京都府立大学3回生の清水さん。

「ニュースを聞いて、慌てて絵を描きました。
研究会のメンバーとああでもない、こうでもないと話しながら。
いま思い出しても、あんなに楽しかった経験はありません」と、
惑星の想像図を描いた当時のことを振り返ります。

いまの時代は、宇宙バブル?!

「昔は地球は珍しい存在なんて言われてましたが、
この10年で、惑星がごくありふれた天体で、
銀河系の恒星の数より多いことが明らかになってきました」と話すのは
滋賀県立守山中学・高等学校「ハビタブル研究会」顧問の大橋先生。

この研究会を立ち上げた2014年当初は
生命可能存在領域のハビタブルゾーン内の惑星は、
せいぜい数十個ほどしかなかったそうですが、
なんと、いまでは数千個!
まるで「宇宙バブル」のようだと話します。

ハビタブルゾーン内に数千の惑星があるということは、
生命が存在する可能性もそれだけあるということ。

「地球は珍しい存在ではないかもしれません。
宇宙人の存在というのは、急に現実味を帯びてきたんです」。

見上げる夜空の彼方に、きっと生命が存在している。
それが人間のような姿なのか、それとも植物か、
それともアメーバみたいな…。
この宇宙で命を育むのは地球だけではないことが
当たり前の時代に突入しました。
想像図を描く作業は、これからさらに加速度を増していく
そんな時代の気配に満ち溢れています。

「本当に、そういう時に入ったと思います。
本校の研究会メンバーだけでは
想像図を描くという作業が追いつかないので
いま、ハビタブル研究会の活動を
全国の高校にも広げていこうという話も出ているんです」。

好奇心は、思わぬ場所へ連れていく

2014年、滋賀県立守山中学・高等学校は
国際的に活躍できるリーダーを育成する
「スーパーグローバルハイスクール(SGH)」に指定され、
そのプロジェクトとしてスタートしたのが『ハビタブル研究会』でした。

京都大学の山敷先生の指導のもと
系外惑星データベースのデータを整理するという
事務的な作業が目的でした。
じつは、惑星の想像図を描く計画はまったくなかったと言います。

2014年は地球によく似た太陽系外惑星、
ケプラー186fの発見をきっかけに、
ハビタブルゾーンの惑星が次々と見つかっていたこともあり、
たくさんの惑星データが集まっていました。


しかし、想像図を描くのはNASAだけの仕事。
「それなら、こちらでも惑星のイメージを描いて
NASAに提案していこう」という山敷先生のアイデアから、
この研究会の活動が本格的にスタート。
いまではその腕前を認められるほどになりました。

「まさかNASAにつながるとは思っていませんでした。
時代の波に乗ったのでしょうか」と研究会顧問の大橋先生は
当時の様子を振り返ります。

宇宙のスケールを相手にすれば、
計画していかなかった偶然のアイデアも
時に予想もつかない方向へと
導いてくれることがあるのかもしれません。


2014に立ち上げた「ハビタブル研究会」初代の高校生たちは、
今ではそれぞれの大学へと進み
今年、2021年には次代を担う中学生2名が入部しました。
夜空や星座が大好きな女の子たちです。

集められた観測データをもとに
10代の鋭い感性と豊かな想像力が、
未知の惑星を、見えるものとして描き出していく。

この今を暮らしながらも、
夜空に輝くのは数千、数万年もの過去から届く星の光。

遠すぎて、想像力さえ追いつかないような宇宙のどこかに
地球と似た生命がきっと存在している。
そんなことを想像するたびに、
いつでも心は宇宙サイズに広がっていくのかもしれません。

好奇心と想像力で未来へ向かう「ハビタブル研究会」。
その取り組みは、これからも様々な発見や出会いへとつながって、
思いもよらない場所へと連れて行ってくれるのかもしれません。

(取材・文/亀口美穂 写真/若林美智子)